日 時: 2023年3月14日(水)19:30~21:00 ZOOMで開催
参加者: 8名

【生きにくさについて考える PartⅢ】

〇自身の仕事の中から、どのような生きにくさを感じている人がいるのか?

・子育ての難しさを感じている家庭のお話。家で泣いている子どもの様子や泣き声を聞いて、近所の方に通報されたことがあり、監視されているように感じてしまう。と話されていたことに生きづらさを感じた。

・午前中に保育園から公園に遊びに行った際、子どもたちの遊んでいる声を聞いて、公園近隣に住んでいる方が、あからさまに迷惑そうな態度をしていた。それ以来その公園には散歩に行けていない。公園で遊んでいる時も子どもの声に気をつけなければならないことに生きづらさを感じると同時にその近隣の方にも生きづらさを感じる。

・保育園に通う医療的ケア児のお話。医療的ケアが日常的に必要なお子さんは、保育施設に通所することのハードルが非常に高い。集団生活の難しさ以外にも受け入れ施設の状況にも左右される。地域の中には孤立している家庭も多いのではないかと感じる。

〇タイパ(タイムパフォーマンス)についての新聞連載記事から現代のタイパについて感じることを出し合う

※「タイパ」とは、時間対効果を意味する「タイムパフォーマンス」の略語です。最近では当たり前に使われている「コスパ(=コストパフォーマンス)」が費用対効果(効率のいいお金の活用)を意味するのに対し、タイパは効率のいい時間の活用を意味します。タイパという言葉は、主にZ世代を中心とする若者の間で流行しています。

・テレビ番組でも料理や片付けなど家事を時短する特集をよく目にする。

・自分はタイパではなく、つりなど時間をゆったり使えることが好きだが、なかなかできていない。

・保育の業務(書類)などはまさしくタイパを活かしていかないといけない。

・楽曲づくりや漫才にもタイパの影響が出ている。最初に観客を掴まないと、逃げられてしまう。

・時間には、24時間という「社会的な時間」と、「自分の時間」がある。社会的時間が個人の時間を搾取されたときに人はストレスを感じる。お金のある人、人を動かす仕事をしている人たちは、自分の時間で動いており、人に使われている人たちは、自分の時間をたくさん費やして生活している。

・タイパを考えることは、少しでも自分らしさを取り戻すための時間を創り出すためにある。

・現代社会の中では効率生優先、生産性優先の社会であり、費用対効果を上げるということが出来なければ社会に必要だと感じてもらえない。この考えは多数派となり、子どもたちや若者にも伝播している。

・現代はワークライフバランスを大切にすることが求められている社会。働く人たちの権利を守る上では必要なことではあるが、生産性、効率性を求められ、うまくタイパできる人しか評価されないという側面があるのでないか。それは能力主義、優生思想にもつながってくるのではないか。このタイパが流行している背景には、社会の余裕の無さが現れている。社会的時間(やらなければならないことをする時間)が、自分時間(自分の好きなことができる時間)を侵されると、人は強くストレスを感じる。生きにくい社会が作られていると言えるのではないか。

・子どもたちも、みんなと一緒の事をしていないと仲間外れになる。子どもたちも自分の意志ではコントロールできない社会に生きている。

〇糸賀一雄について

・日本の社会福祉の実践家。知的障害のある子どもたちの福祉と教育に一生を捧げた。戦後日本の障害者福祉を切り開いた第一人者として知られ、「社会福祉の父」とも呼ばれる。

著書『この子らを世の光に―近江学園二十年の願い』

・恩恵的に光を当ててやるという意味の「この子らに世の光を」ではなく、自ら光り輝く存在であり、そのことを支えていくという意味で「この子らを世の光に」という言葉を遺した。

糸賀は、1960年代に『生産性とは自己実現である』とも言った。生産性、効率性を求める社会は、必ず取り残される人が生まれる。その人らしく生きること、ありのままで生きることが自己実現であるならば、誰も取り残されることはない。そんな社会をつくるために私たちにできることは何なのだろうか?

〇私たちの周りでこれだけ「生きづらさ」が存在するのならば、障がいのある子どもたちは、社会の規範や普通の中で、もっと「生きづらさ」を持っているのではないだろうか。

・社会を変えていける政治の力も必要なのではないか

・障がいのある子だけではないが、発達の遅れている子どもたちやその保護者の、地域での生活に視点を置き考えることが必要ではないか。保育所や施設に関わっているのは一瞬であり、子どもたちは家で地域で生活を継続している。施設の中で何か課題が見つかれば関わる大人が入り込める施設内だけの話ではなく、買い物中、休日の公園、夕食から明日の準備お風呂に寝ること、朝の生活等々、そこには私たちが見えていない「生きづらさ」「生活のしにくさ」があるのではないだろうか。

・生きづらさとは、隠れていて見えないことが多い。生きづらさを抱えている人の生の声を聴くことが大切である。

〇来年度障がい児者研究会でやってみたいこと・・・

・現在、zoomという機能があるので、大地協だけの集まりではなく、東京や名古屋の人たちとも話を深めていきたい。

・今年度実施した各施設に障研のメンバーが来園させてもらう「しゃべり場」は継続していきたい。

・障がいの有る方や、様々な困難を抱えている人たちの「生の声」を聴く機会を創って欲しい。

・子ども食堂等の活動で、直接子どもの貧困と関わっている方たちの話を聞きたい。

・「誰にでも優しいあそび」を学ぶ機会が欲しい。

・コスパやタイパ重視で動いている社会に抗うため、顔と顔を突き合わした対面での研究会を進めていきたい。

補足 糸賀一雄 「福祉の思想」より

 この子らが不幸なものとして世の片隅、山峡の谷間に日の目もみずに放置されてきたことを訴えるばかりではいけない。この子らはどんなに重い障害をもっていても、だれととりかえることもできない個性的な自己実現をしているものなのである。人間とうまれて、その人なりの人間となっていくのである。その自己実現こそが創造であり、生産である。私たちのねがいは、重症な障害をもったこの子たちも、立派な生産者であるということを、認めあえる社会をつくろうということである。「この子らに世の光を」あててやろうというあわれみの政策を求めているのではなく、この子らが自ら輝く素材そのものであるから、いよいよみがきをかけて輝かそうというのである。「この子らを世の光に」である。この子らが、うまれながらにしてもっている人格発達の権利を徹底的に保障せねばならぬということなのである。

〇次回の障がい児者研究会は、4月19日(水)19:30よりZOOM開催の予定